潤、14歳

1/9
97人が本棚に入れています
本棚に追加
/228ページ

潤、14歳

潤は怯えた風もなく男たちの前に両の足で立ち、 「触らないで」 きっぱりと言う。 「私に触らないでよ!」 潤の迫力に気圧されて、取り巻いていた男たちはちょっと怯んだ顔をした。 「……潤」 潤の背中にしがみついたまま、不安そうに見上げてくるさくら。 ふたりは上級生に半ば無理やり、この潰れかけた喫茶店に連れてこられていた。 そこで言われたのが、 「来生潤(きすぎうる)、お前は俺と付き合えよ」 潤を呼び出したチームリーダーの志島悠人からの交際の申し込みだ。 当然、こんなやつの申し出に潤が承知するわけもなく、 「お断りします」 断ったのだが、 「はぁ!? なんだとこいつ」 「生意気な女だな、やっちまうぞ」 男たちはたちまち色めき立った。 そこいら中から乱暴に手が伸びてきて、くっついている潤とさくらを引き剥がそうとする。 潤たちは精一杯、男たちの手を振り払って抵抗した。 「私たちに触らないでって言ってるでしょ!」 潤にとっては当然の権利のはずなのに、男たちはニヤニヤ笑うだけで、嘲るように潤たちをからかう。 そしてそんな様子を、ソファーに座ったまま楽しげに見ていた志島が、 「痛い目みる前に、言うこときいた方がいいぜ」 潤に再提案してきた。 「おとなしく言うことをきけば、そっちの女は帰してやるからよ」 「……潤」 さくらは今にも泣き出しそうな顔で潤を見上げてくる。 それでも、 「私、帰らないからね」 震えながら言ってくれた。 「潤を置いてなんか、絶対に帰らないから」 「――さくら」 潤は唇を噛んで、これからどうするべきか真剣に考える。
/228ページ

最初のコメントを投稿しよう!