潤、14歳

2/9
99人が本棚に入れています
本棚に追加
/228ページ
しかしその時、 ――。 店の表が急に騒がしくなった。 何ごとかとドアの方を振り返れば、 ――カラン ドアベルが鳴って、 「潤、ここにいたのか」 ひとりの男が、姿を現す。 外の喧噪などまったく意に介さないと、まるで偶然居合わせたかのように店に入ってくる。 もちろん、そんなわけがあるはずもなく、 「夏樹ちゃん!」 潤は声をあげて、夏樹に駆け寄っていく。 「どうしてここに?」 「迎えに来たんだ」 夏樹はその場の空気さえ変えてしまうような極上イケメンだ。 夏樹が身に纏う圧巻の雰囲気に気圧されて、男たちは一瞬何も言えなくなる。 そんな中で夏樹は、 「俺を呼んだろう潤」 余裕たっぷりに微笑みながら言う。 潤はホッとしながらも、びっくりして、 「え? 呼んでないよ」 「嘘だろ。ちゃんと聞こえたぜ」 「?」 「助けてって潤の声が聞こえた」 夏樹はまるで王子様だ。 潤のピンチに颯爽と駆けつける王子様。 それは昔からずっとそうで、夏樹は潤だけの王子様だった。 それから、 「もう大丈夫だから」 夏樹はそう言って顎をあげると、男たちと向き合う。 「さて、俺の潤の泣かせたのはどいつかな」 不敵に笑って、そいつらを見下すように顎をあげた。
/228ページ

最初のコメントを投稿しよう!