潤、14歳

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「だって最初は、センパイの呼び出しだって言われて……」 潤は唇を尖らせたが、それでも最後にはしょんぼりと、 「それ……、パパにも同じこと言われてたの」 「それで春とケンカしたんだって?」 夏樹の問いに潤はうんとうなずく。 「あんまりしつこいから、うるさいって言っちゃった」 うなだれる潤に、夏樹は腕を伸ばしてきて、クシャクシャと髪を撫でる。 「今度から気をつけてくれればいい。俺も注意してて良かった。でもいつもこんな風にうまくいくとは限らないから、自分でもちゃんと自覚しろ」 「自覚?」 社会人の夏樹が中学生の潤に一体どんな風に注意していたのかと、少し疑問に思うが、夏樹は、 「潤は可愛いんだってことにだ」 「……」 黙り込む潤を、夏樹はチラリと横目で見る。 「どうした?」 「夏樹ちゃんもパパもすぐそんな風に言うけど、私にはどうしても信じられないの」 「何が?」 「――私が可愛いって」 潤がいくら鏡を覗き込んでみても、そこにいるのは平均的な女子中学生だ。 けして美少女とかではない。 でも、父親の春一も夏樹も、 「潤は可愛い、可愛い」 と口を揃えて言う。 「パパや夏樹ちゃんの方がよっぽどイケメンじゃない。なのにどうして、私のことを可愛いなんて言うの?」 なんだかバカにされているような気がして、どうにも腹が立ってきてしまうのだ。 それでつい、潤を心配する春一に八つ当たりした。
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