潤、14歳

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夏樹は、 「春が朝メシを一緒に食おうとするのは、俺たちと暮らしていた頃と同じだな」 懐かしそうに目をすがめる。 「夏樹ちゃんたちと?」 「ああそうだ。俺や秋、冬依オジチャンたちと、みんなひとつ屋根の下で暮らしていた頃だ」 夏樹は冬依のことだけは、いつも必ず『オジチャン』を付けて呼ぶ。 「あの頃の春は今よりもっと忙しかったぞ。それでも必ず一日に一回は全員の顔を見るんだって、朝は無理して起きて来てた。昔の俺たちは、きっと潤より目が離せなかったんだろうな」 「目が離せないって、みんな不良だったの?」 潤が聞くと、 「いいや、素直でイイコだったぜ」 夏樹は意味深にほくそ笑む。 それから、 「潤もあんま春に心配かけるな。じゃないと春は、今度こそハゲるからな」 「パパが、ハゲる……」 それは潤にとって考えてもみない重要案件だったようで、今度は真剣な顔をして悩み始めた。
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