潤、14歳

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潤は、 『本能が避ける匂いって何だろう』 と思い、試しに自分をくんくんと嗅いでみた。 そんな潤を夏樹はおかしそうに笑い、 「嗅いだって、自分の匂いなんてわかんねーよ」 潤は、今度は顔ごとグイと寄せ、夏樹の脇の辺りを嗅いでみた。 夏樹は身を捩って避けようとしたが、でも車の運転中では思うようにいかず、結局逃げることもできずに、 「……もうよせ」 そう言われるまで、潤に存分に匂いを嗅がせてくれた。 そして結局、 「夏樹ちゃんはいい匂いがするよね」 潤はそう結論づける。 夏樹は小さな頃から、潤の一番側にいてくれた人だ。 本能が遺伝子の近い人間を避けようとするのなら、夏樹のことも不快に感じて当り前のはずなのに、何故だか、逆にいつまでもくっついていたい、嗅いでいたいと思う匂いがした。 「……なんでだろう。夏樹ちゃんは私の叔父さんなのに」 それから潤は、ついでのように、 「ねぇ、夏樹ちゃんは誰かと結婚しないの?」 聞く。 夏樹は……、 大きなため息を吐き出した。 そして、 「俺を、誰だと思ってんだ潤」 ちょっと笑いながら言って一瞬潤の方を見たが、その時逆光のせいで、夏樹の顔はよく見えない。 「……夏樹ちゃん」 夏樹は、さりげなく潤から目を逸らすと、 「さくらちゃんには、今度俺の写真を送っとけ」 そう言って、胸ポケットからサングラスを出して顔にかけ、すべての表情を潤から隠してしまった。      ――了――
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