冬依 表

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冬依 表

冬依はロッカーからびしょ濡れの靴を出してきて、 「こんな状態だから帰れなくてさ」 困り果てたと首を傾げる。 「だからカエデに迎えに来てもらったんだ」 普通なら関係者以外立ち入り禁止のモデルクラブのロッカールームである。 そんな場所に冬依に呼ばれて、カエデは一目散に駆けつけてきた。 冬依から無残に濡れた靴を見せられて、 「クソッ、誰ですか一体!」 カエデは屈辱に、本人よりも顔色を変える。 「我慢できねぇ。俺が一発殴ってやります」 拳を固めてロッカールームを飛び出して行こうとするのを、 「いいーよぉ別に、ボクは気にしてないから」 冬依はベンチに腰をかけながら、のんびりと足を揺らす。 「第一カエデは誰を殴るっていうのさ」 冬依に言われて、カエデはグッと詰まる。 雑誌やホームページで冬依と同じモデルクラブの人間は把握しているが、冬依の人間関係を知らないカエデに誰が犯人かなどわかりようがない。 そもそも普段は、職場には押しかけるなと固く釘を刺されているのだ。 「……じゃあ、何も出来ねぇってことですか」 カエデは耳が垂れた仔犬のように情けない顔で床にしゃがみ込んだ。
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