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しゃがんで膝の裏をすくおうとすれば、
「まさか、お姫さま抱っこじゃないよね」
冬依は白い目を向けてきた。
「ボクは男だよ」
『じゃあなんで抱っこなんかせがむんだよ』
と心の中で突っ込みながら、
「では」
背中を向ければ、
「オンブは格好悪い」
どうすればいいのだとカエデは途方にくれる。
やがてうんうん唸って考えあぐねた結果、片腕で冬依の尻をすくい縦抱きで持ち上げることになった。
「冬依さん頼んます、俺の肩に手ぇ回してください」
さすがに片腕では冬依の全体重を抱えるのはキツい。
中学時代なら余裕だったろうが、今の冬依もうカエデと同じくらいの身長なのだ。
「わかった」
冬依は弾んだ声で言って、今度はいきなり、カエデの頭を両腕で抱きしめてきた。
ふわりと冬依の香りがカエデを包む。
「えっ、ちょっ――」
カエデが声をあげると、冬依はクスクス笑いながら、
「ホラ、あいつらだよ。こっちを見てる」
あいつ『ら』!?
複数か?
見れば確かに何人かのモデルらしい男が歯噛みしながらカエデのことを睨んでいる。
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