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「トーイ。何を見つけたんだい」
ジェラールは相変わらずうるさく話しかけてくる。
冬依はそれまで、ジェラールの存在を道ばたの石のようにきっぱり無視していたのだが、
「……リュカが」
ふと口にした。
「リュカ?」
突然冬依が言った名前を、ジェラールは確かめるように繰り返す。
ジェラールの不安そうな顔を冬依は見上げて、どんな焚きつけられ方をしたら、こんなバカなダンスを踊るのかと、ちょっとジェラールのことが哀れになる。
冬依は、ジェラールの愚かさを理解できない。
そんなジェラールに聞かせるために、冬依は、
「さっきリュカが傷ついたボクを慰めてくれたんだ。優しくね。それで落ち着いた。リュカはとってもいい人だね」
ジェラールはしばらく何か考えていたようだったが、やがて屈辱にゆっくりと頬を紅潮させていく。
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