雨の日に仔犬を拾わせてみた(まだ4兄弟が同居していた頃の話)

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「待てってば!」 傘もささず飛び出していく秋哉。 しかし仔犬は短い足をフル回転させて土手をのぼっていく。 その時、濡れた草に滑ってコロリと転んだ。 そのままコロコロ転がって、雨で増えた川の流れの中にドボンと落ちる。 秋哉はためらうことなく後を追って飛び込み、 「キャアアアアア!」 カズエが悲鳴をあげる。 しかし、 「痛ってぇ!」 秋哉はすぐに水の中から飛び出してきた。 それもそのはず、川の水は濁った水のせいでわかりにくいが、20センチ程度しかない浅瀬なのだ。 そこに思い切り頭からダイブしたものだから、秋哉は石で額を切って血をダラダラ流している。 「アキッアキッ、あがってきて早く」 水の量は少なくても、押し寄せる濁流は十分に人を溺れさせることがある。 足をとられたら、オシマイだ。 そんな中で秋哉は、 「ちょっと待ってくれ」 ちゃんと仔犬を捕まえていて、水の中で四つん這いになって、腕を伸ばして仔犬を先に岸に押しあげてやった。 怯えた仔犬は、陸地に下ろされるなり一目散に走って逃げていく。 「あっカズ、捕まえてくれ」 秋哉は言ったが、 「バカッ! あんたの方が先よ」 カズエは仔犬を無視して秋哉に傘の柄を差し出す。 秋哉はそれを掴んでようやく岸にあがってきた。
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