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すると、
「……すーずーねー」
夏樹は海の底から響いてくるような低い声で呻いて、ついでに鈴音のことをギロリと睨む。
「ヒャッ」
しゃっくりみたいな引き笑いを最後に、思わず息も引っ込む。
このまま笑い続けたら、本気で石にされそうだ。
夏樹は、
「チッ」
舌打ちしたかと思うと、咥えた髪ゴムで手早く髪をひとつにまとめた。
夏樹の形のいい額が露わになって、ひどく男っぽい。
思わずドキリと胸が鳴って慌ててうつむく鈴音に、
「なんだ? 俺に見惚れたのか?」
夏樹はいたずらっぽく笑う。
鈴音は慌てて、
「違うよ。ただあの岩が珍しいなーって見てただけ」
夏樹の後ろで、海からニョッキリ生えている奇岩を指差す。
夏樹も振り返って、
「そうだな」
目を細めた。
そのまま2人並んで自然が造る造形美を眺める。
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