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「鈴音にそんな顔させるために、こんな場所に連れてきたわけじゃないよ」
夏樹は鈴音の頭にポンと大きな手のひらを乗せる。
「鈴音が俺を選んでくれたから、俺はこうやって幸せだ」
「……夏樹」
「ウソじゃないぜ。だから鈴音も、いい加減自分を許してやれ」
見上げた鈴音の瞳からホロリと涙が零れる。
夏樹は鈴音を抱きしめた。
「いいんだ鈴音。鈴音はもう幸せになっていいんだ」
夏樹の声が静かに静かに頭に降ってくる。
鈴音は目を閉じて、夏樹の腕に身を委ねた。
夏樹の側にいると、まるでゆりかごの中にいるように安心できる。
夏樹の腕に包まれて、船の上で、鈴音は静かに波に揺られる。
「俺と幸せになってくれ鈴音」
夏樹の声が、優しく繰り返す波の音と共に、鈴音の中に染み込んでいく。
「俺が必ず、鈴音を幸せにするから」
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