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鈴音の胸の中には、まだ春一の存在が大きく占めている。
春一を信じた鈴音は、全身全霊をかけた、間違いなくあれは『愛』だった。
だから夏樹は、そのままの鈴音でいいと言ってくれる。
春一を忘れられなくても、春一のことを好きなままでも『いい』と言ってくれる。
ただ、
「春のことで苦しみ続けるのは、もうやめろ」
と言う。
「俺は春とは違う。どこにも行かない。何があっても鈴音の側にいる」
すべての関係を断ち切るように、いきなり消えてしまった春一とは違い、夏樹はずっと鈴音の側にいてくれると言う。
夏樹はどこにも行かない。
夏樹はきっと、一生をかけて鈴音に幸せをくれるだろう。
守ってくれる。
鈴音を愛し、その腕で包んでくれる。
「鈴音は幸せになっていいんだ。そのために俺はいる」
夏樹がくれるのは、無償の愛。
「幸せになれ鈴音」
「幸せになろう鈴音」
海風はまだ冷たくて、鈴音は夏樹がいなくては寒くてたまらない。
だから包んでくれる夏樹の腕は心地いい。
夏樹は温かくて優しくて頼もしくて、鈴音は、
「……いいのかな」
夏樹の胸に顔を埋めて呟く。
「私は、夏樹に甘えてもいいのかな」
「当り前だ」
夏樹は笑う。
「俺に全部任せてろ」
夏樹は鈴音を抱く腕にギュッと力を加えた。
「俺は鈴音を一生愛し続けるよ」
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