カエデの場合

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カエデの場合

冬依がフランスへ引っ越してしまう前に、カエデは頼み込んで頼み込んで、ようやく冬依とふたりきりの時間を作ってもらった。 ただ出立まであまり日もないせいで、カエデに許されたのは冬依が飛行機に乗る前夜の僅かな時間だけだったが。 「やあ来たよカエデ」 電話をすればまた迎えにくると言って、来生家の二番目の兄貴は、冬依を置いて車で帰っていった。 「夕食を一緒にって話だったから、夏兄にサンドイッチを作ってもらったんだ。でもカエデはもう食べちゃったよね」 時間は夜の10時を回っている。 カエデは、 「いいえまだです。冬依さんと約束しましたから」 「そうなの?」 冬依は不思議そうに小首を傾げて、カエデの手の上にポンと一人分のサンドイッチを乗せる。 「ごめんね。でもボクは先に食べちゃったよ」
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