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通話なんか切られた日には、この後カズエがふたりに何をされるかわかったものではない。
秋哉だって気になって気になって……、今すぐにでも官舎を飛び出してしまいかねない。
でもそれは、懲戒免職ものの重大な規則違反なので、実行するわけにもいかなくて……。
「……ゼッテーに、電話を切るんじゃねーぞナツキ」
仕方なく歯噛みしながらそう言うしかない秋哉に、
「リョーカイ。アキはそこで黙って見とけ」
夏樹は残酷に言い放った。
「さあカズちゃん。料理の続きをしようか」
今度は背中を抱いて、これ見よがしにエスコートしていく。
冬依まで画面に顔を近づけてきて、
「そうそう。カズエちゃんのことはボクに任せて」
ニコリと微笑む。
「ボクが責任持って美味しくいただくから」
「!」
「おっと、料理の話ね――」
焦る秋哉に完璧なウインクをひとつ寄越して、楽しそうにふたりの後を追っていく。
「……ぬぐぐぐぐ……」
声にならないうめき声をあげながら秋哉は、手の出せない場所からおとなしく見守るしか術がないのだった。
――了――
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