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冬依はカエデの耳元に唇を寄せ、
「少し、見せつけてやろうよ」
そんなことを言うから性的指向を誤解されるのだと思いながらも、カエデはやっぱり冬依に逆えるわけがなくて、せめてこの場は冬依に相応しい男であるべく胸を張って大股で歩き出す。
ロッカールームから冬依を抱いて廊下を闊歩していくカエデに、男たちはさざ波がひくように道をあけていった。
そんなカエデに冬依は楽しそうに告げる。
「ボクを抱いていいのはカエデだけだからね」
カエデの心臓が飛び跳ねた。
「ボクにエロいこと考えるヤツは、みんなぶっ殺してやりたくなる」
「……」
ああ、そっちの方の『抱く』ね。
カエデの首がガクリと落ちる。
楽しそうに笑っている冬依は、
『わかっててやっているんだろうなぁ、きっと』
もう諦めるしかない。
多少、性格は穏やかになったかもしれないが、相変わらずカエデは、冬依に振り回されてばかりいる。
仕方ない、選んだのは自分だ。
カエデはため息をついて、
「真っ先に殺されないよう、気をつけますよ」
単純に冬依に迫れる男たちを、少しうらやましく思った。
――表 了――
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