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カズエの元気が戻ってきた。
写真の自分が、いつも秋哉と一緒に飛んでいたのだと知らされて、思わず頬が緩んでしまう。
嬉しい。
かなり、幸せだ。
でもこんなこと、秋哉は絶対にカズエには教えないだろうから、これは朗報だ。
そして今度は、直近に撮った写真を秋哉に送ろうと決心した。
いつまでもソバカスだらけの高校生の頃の写真では、カズエだってたまったものではない。
カズエがちょっとフワフワした気分であれこれ考えていると、
「でもこんな個人的なスクランブルは初めてですよ」
カズエを先導していた女性がふと口にする。
「……え?」
思わず聞き返すカズエに、女性はにこやかに振り返ると、
「プライベートな事情で飛ぶことに集中出来ないなんて言い訳、これまで聞いたことがありません。前代未聞です。おそらく後で目一杯叱られることになるでしょうから、三嶋さんも覚悟しておいてくださいね」
「……へ?」
微笑む女性の目の奥は、しかしまったく笑っていない。
「はっきり言って、この事態は停職減給ものですから」
女性はきっぱりそう言うと、またカズエに背を向けて歩き出した。
――了――
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