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なんとか秋哉を川の中から引き上げた頃には、カズエもスカートにかまわず地面に座り込んでしまう。
全身ずぶ濡れてドロドロで、もうどうだって良くなっている。
「もう! アキってば信じられない!」
まだ心臓がドクドクいってる。
「ホントにホントに信じられない!」
怒りながらカズエは涙が止められないのだが、ぐしょ濡れのせいで、どうやら秋哉には伝わってないようだ。
「ごめんてばカズ、そんな怒鳴んなって」
秋哉は呑気に言って、
「あいつ大丈夫かなぁ」
仔犬が消えた草むらを、つま先立ちで見送っていた。
――冒頭、冬依に戻る
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