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ーー今日がなんの日だか覚えてる? ーー今日は、彼と私が夫婦になって10年を迎えた記念日。 不器用な彼から、彼だから書けた不器用なラブレターを貰った日。 「ご飯食べる?」 「あぁ、もちろん食べるよ」 「明日は?」 「明日になってみないと分からないけど、食べるよ絶対」 「なにそれ、分からないのに絶対なの?」 「だって、僕は君の旦那さんだからね」 ーー夫婦って、よく分からない。 でも、夫婦になったから分かったこともある。 些細なことにイライラして、素直に気持ちを伝えることが難しくなって、仲直りするのにも時間がかかって。 愛が減ってしまったような気持ちになって、でもちゃんと愛されている。 毎日一緒にご飯を食べたいと思える関係。 「あ、ひとつ聞いてもいい?」 「なに?」 彼が珍しく質問をしてきた。 「ノートにも書いたけど、君があの日僕を呼び出した理由」 「あぁ、あれね。分からないの?」 「分からないから教えてよ」 彼らしいそれに思わず口元を緩めて笑ってしまった。 あんなに恥ずかしいくらい、あなたのことが好きだって返事を書いたのに、気がつかないのだろうか? 「本当に本当に分からないの?」 「……?分からない」 「じゃあ、内緒」 たぶん、いや絶対。 私はこの先ずっとこの人のことが大好きだ。 不器用な彼からの素敵なラブレターは私の一生の宝物。 “この物語は僕から君への恋文です 手紙なんてめずらしいと言って君は笑うかな 口下手な僕には恥ずかしくてこういう方法でしか 今更君に素直に思いを伝えられないから これを読んで僕の君への気持ちが少しでも 伝われば嬉しいです 今日がなんの日だから覚えていますか 大好きな君へこれからもどうぞよろしく 僕と一緒になってくれてありがとう” “ありがとうでも私の方が絶対に あなたのこと大好きよ これからもよろしくお願いします” 【口下手夫婦のラブレター】おわり
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