肉スタグラム

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肉スタグラム

 さて、読書で得た知識をもとに思うのですが、人間の根本的感情は「欲望」と「喜び」と「悲しみ」です。  僕ちゃんの「欲望」の対象は背が小さく小柄でなおかつ胸が大きくセクシーで、お尻がグラマラスな頭のいい女性で、彼女達の血の滴る心臓をこの手に確と掴むことはとてつもない「喜び」に繋がります。  死体の処理だけが少し面倒で「悲しみ」を伴いますが、さほど気にはしていません。    これはさだめだと諦めております。    僕ちゃんは、彼女達の開いた胸から慎重に切り取ったばかりの、まだ新鮮な「心臓」を右心房左心房右心室左心室と綺麗に切り分けるのが、とても好きなのです。  蕾から花が咲くようにさばきます。  それはそれは僕ちゃんの欲望なのです。  それも俎板の上で、丁寧な仕事を喜んでします。  本当はその手捌き包丁捌きを誰かに見てもらいたいのですが、悲しいかなそうもいかない。  いかんせんついさっきまで動いていた新鮮な人の心臓ですからね。  神経質にもなります。  その、まだ細胞がピクピクとしているかのような心臓を切り分けた後、下駄に綺麗に盛り付けます。  見た感じは刺身の盛り合わせとでも言いましょうか、なかなかのもんです。  ツマには大根の千切りとキュウリの千切りと大葉を使います。  あともう一つ何か「スパイス的」なものが必要な気もしますが、何かはまだわかっていません。  もっともっと研究しないといけませんね。  そして高級料亭みたいに飾り付けることを心掛けます。  食事の見た目にはそこそこ気を使うタイプなんです。  喜びを得るにはそれ相当の努力を惜しまないことです。  そして、もちろんiPhoneXSで写メを撮りインスタグラムに投稿し沢山の肉ファンから「いいね」をもらいます。    実はフォロワーもどんどん増えてるんですよ!  僕ちゃんの肉スタグラムはちょっとした自慢です。  それとぉ・・・。  安心してください。  「食事の見た目」とは言いましたが、その心臓の肉を自分で食べることは、まったくもって、ございません。
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