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高台のマンションの屋上からは神戸の街が一望出来た。
進藤は何かあると、このマンションの屋上に来て街を眺めていた。
途中で買った缶ビールを開けると手摺に寄りかかり、温い夏の風を感じていた。
夏特有の噎せ返るような臭いが漂う。
冷えた缶ビールを口に含み、眠らない歓楽街の明かりをじっと見つめた。
新しい事を始める。
そんな事は誰も望んでいないのだろうか…。
進藤は遠くに見えるオフィス街を見つめた。
ふと気配を感じ、振り返ると若い女と男が進藤と同じように缶ビールを飲みながら屋上へと上がって来ていた。
進藤はマンションの住人かと思い、その二人に小さく頭を下げると、また街を見た。
「へぇ…。こんなところがあったのか…」
男はそう呟いて、進藤から少し離れたところに手摺に肘を突いて立った。
「このマンションだけは昔から自由に屋上に入れるのよ…」
女はそう言うと男の横に立って、瓶の酒を飲んでいた。
「あ、マンションの方ですか…」
女が進藤に言う。
進藤は慌てて、首を横に振った。
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