弐拾七時頃の空に。

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「武さん…。大丈夫なの…会社も大きく変わっちゃって…」 ママは武村に小声で言う。 武村は誰も信用出来なくなっていた。 もしかしたらこのママも須藤の息が掛かっているのかもしれないと思うと、下手な事は話せなかった。 「ああ、須藤が頑張ってるからな…。もう佐々木興業も須藤の時代だろう…」 「それにしたって…」 ママは武村のタバコに火を点けた。 「それにしたって、武さんも須藤さんに嵌められたって話だったし…。佐々木組長はそれをずっと悔やんでたわよ…」 武村は苦笑するとブランデーの水割りを飲み干した。 そしてママの顔を見た。 「時代ってモンに乗り遅れた奴ってのは罪深いのかね…」 そう言うと笑った。 「ご馳走さん。そろそろ行くわ…」 武村は立ち上がった。 そして今一度、背中に差したコルトを確認した。
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