弐拾七時頃の空に。

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進藤は薄くなった酒を飲み干した。 そしてグラスをカウンターの奥へと押しやった。 「マスター。ご馳走さん…。いくら…」 マスターは進藤の前に立って、伝票を置いた。 今日の進藤はこの店に来ても癒される事は無く、重い気持ちを引き摺ったままだった。 金を払い、横の席に置いた鞄を手に取る。 「進藤ちゃん…。嫌な事もあるけどさ、上手く憂さ晴らししなよ…。上手く生きるって憂さ晴らしが上手い事を言うんじゃないかな」 マスターはカウンターから出て来てそう言う。 「ありがとう…マスター」 進藤は店のドアを開けてカウベルを鳴らした。 「また来るよ…」 「ああ、いつでも来て…。俺で役に立つなら話を聞くよ…」 マスターはいつもと変わらない表情で笑っていた。
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