エピローグ ~影~

2/4
569人が本棚に入れています
本棚に追加
/147ページ
    三橋たちと別れたあと、七月は、もうめんどくさいから、今日の晩ごはんはコンビニ弁当にしようと思っていた。  慣れた明るい道だった。  だから最初は気づかなかった。  向こうからそれが迫り来ていることに――。  影――。  行き交う人々の間に落ちる影がひとつ多い。  何故、地面を見てしまったのか。  いっそ、気づかず通り過ぎればよかったのに。  人がまばらだったので、人波に隠れることなく、それが見えてしまったのだ。  七月は動揺をその影に悟られないよう、平静を装い、真っ直ぐ歩く。  逃げ込めるコンビニを目前にして、その影とすれ違った。  緊張のあまり、足がもつれそうになった瞬間、耳許でその声が聞こえてきた。 『……な、つき、      ちゃん……』  七月は(たま)らず駆け出し、コンビニに駆け込む。
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!