えっ? 魔法陣……?

9/52
前へ
/147ページ
次へ
    秋になると鮮やかに紅く染まる七竈の木も、今はただの木だ。  校庭の隅にあるそれを槻田は黙って見つめていた。  少し風が強くなってきた。  七竈は、吹きつける夜風に重そうなほど葉のついた枝を揺らしている。  ふと、槻田は何かの気配を感じ、振り向いた。  図書室に灯りがついている。  ゆらゆらとした光の中、窓際に立つ人影が、なんだか七月のような気がした。  肩までの髪に少し天然が入っているようなシルエットだからか。 『お前の相手をしている暇がなくなった』  時折、あの日のことを思い出す。  少し困ったような顔で自分を見上げていた七月の目。  ああいう性格だから、文句を言ったりはしなかったが。  それにしても、 『あ、そう――』 は、ないだろう?  自分が振っておいて、そんなことを思う。
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!

568人が本棚に入れています
本棚に追加