ラブストーリーは唐突に?

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「ただいま〜」 その日の仕事を終えて帰宅すると和宏が待っていてくれた。 「おう、おかえり〜」 林和宏、22才。大学三年。 中学からの同級生で、地元の四国から一緒に上京したルームメイトだ。 「今日は一段とくたびれた顔してんな^_^」 「うるせーよ。学生と違って社会人は気苦労が多いの!」 実際は仕事とは関係なく疲れたんだけど‥ こいつは時々妙にするどいと思う。 「それと、イク来てるからな。なんか話があるんだと。」 「イクが?どこにいんだよ。」 イクこと森田郁美は和宏の彼女で、俺の幼馴染でもある。 家が隣同士で生まれた時から一緒の腐れ縁だ。 和宏がニヤニヤしながら俺の後ろを指差す。 するとイクが背後から急に現れ、強烈なヘッドロックをかけてきた。 「いででででで!!!」 「ヤッホー正太!元気してるか⁉︎」 「痛いねんお前は!あと、おっぱい当たってんだよ!」 「あら💓」 自分の胸が俺の頭に当たっているのに気づいたイクはさらにニヤリと悪意のある微笑みを見せて、さらに俺の顔を自分の正面に持っていきいわゆる(?)パフパフポジションで俺の顔に自分の乳房を当ててグリングリンと動かした。 「そっか〜💓正太はあたしのおっぱいがそんなに気持ちいいかぁ〜(//∇//)しょうがないな!ならば思い切り味わいなさい💓」 「そんなんで言うたん違うわ!和宏の前で何しとんねん!」 「あぁごめんごめん!今度はカズがいない時にしてあげるね💓」 そういう問題ではないと思うが(^_^;) 兎にも角にもようやくパイロック‥ぢゃない、ヘッドロックから解放された。 「んで話って何?」 「そうそう、昨日友香から連絡きたんだけどさ、来年の春から西高の旧校舎取り壊しになるんだって!!だからそれまでに一回みんなで地元帰ろう?」 友香?‥そういやイクと仲がいいのでそんな娘いたな。 俺はため息一つついた後、即答で 「パス‥ 「パスってのはナシやで♩」 やはり22年の付き合いは伊達ではないようで(^◇^;) 「えぇか正太?あんた東京出てきてからいっぺんも実家帰ってないやろ?さすがにそろそろ帰った方がええって。」 「そんなん俺の勝手やんか。」 「あんたは自分の勝手でええかもしれんけど、あんたのお母さんとかみんなめっちゃ心配しとるんやで?!とにかく一旦は帰ってあげな!」 イクの言う事は最もだし、帰らないのは俺の勝手なのもわかってる。 「それでもまだどうしても高松に帰る気にはならんのや‥」 「まだ鮎姉のこと引きずっとるん?」 「うん。多分な‥」 「あれから5年経つんよ?妹としては亡くなった姉を想い続けてくれるのは嬉しいけど、幼馴染としてはもういい加減忘れてほしい!確かに鮎姉が死んだときよりはマシになったと思う。あれからしばらく正太、笑う事できんくなったもんね?でもね、普通17からの5年って一番楽しい時期じゃないの?死んだ人間に操を立ててフイにしていいものじゃないよ!お願い正太!まだ正太には辛いかも知らんけど、鮎姉の事はもう忘れて!一緒に高松帰ろ?」 さっきまであんなに明るかったイクの言葉は半ば悲痛な叫びにも聞こえた。 普段はその気持ちをどれだけ抑えて俺に接してくれてたんだろうと思うと胸が苦しくなった。 そう、俺の初めての恋はイクの姉であり俺にとっても姉のような存在だった二つ年上の鮎美とだった。 俺が高1のとき鮎美が不良に絡まれていたのを助けるというベタなキッカケで互いに意識し出し、翌年の春あたりから付き合う事になった。 全ては順調だった。周りは親たちまでその気になり祝福してくれた。 ただ、付き合い出して半年もしない夏休み明けの9月1日、鮎美は自らの手でその命を絶った。 警察の話では前の年にトラブルのあった不良グループから接触があったらしい事は聞いたが、それ以上のことはその時は分からなかった。 そして鮎美の死とともに俺の中の時計の針は止まった。
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