前略、大好きだったあなたへ

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前略、大好きだったあなたへ

俺が恋をしていた頃、LINEはまだなかった。 初恋の頃はケータイすらなかった。 恋を始めた頃、ケータイでメールができるようになり、わざわざ待ち合わせ場所や時間を細かく決めたり、親が寝た後にコソコソ電話をしなくてもよくなった。 でも、その時その時で一生懸命に恋をしていた。 あの人から届いた手紙もその時の一生懸命の形だと思う。 書き出しは「前略、大好きだったあなたへ」 この手紙がなければ俺の人生は違ったものになっていただろう。 物語の舞台は2000年、俺が22才の頃にさかのぼる。 ある春の日の朝、夢を見た。 あの人の夢だ。 毎日ってほどではないが、年に5、6回は見る。 正直シチュエーションとかは覚えてない。 ただ、あの人はいつも心配そうな表情で俺の事を見てくるんだ。 特に会話も交わさない、触れ合うこともない、あの人の心配そうな表情だけ覚えている夢。 そんな夢をある時から100回は見てたと思う。 でも、その日は違っていた。 何が違ったかと言うと‥ 笑ったんだ。‥いつもは心配そうな表情しか見せない彼女が、その日は最後に笑ってくれたんだ。 目が覚めたとき、俺の中で止まっていた時計が動き出したような感じがした。 この物語はそんな夢を見た日から始まる。
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