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ゲームセンターの店内ミュージックと、UFOキャッチャーのおもちゃみたいな音楽、それからアーケードゲームの筐体から流れる効果音。
その音に溢れたこの空間は私を落ち着かせる。ノイズばかりのこの空間は私の心を埋めてくれる。
「有紗。明日十七歳の誕生日だろ?」
レーシングゲームの筐体に座って、ハンドルを握る私の彼氏、悟。私はその隣でカーチェイスの様子を見ながら、冷房が強く効いている室内に、夏服の制服が少し肌寒く、腕をさすりながら、
「うん。誕生日。悟、一緒に過ごしてくれるの?」
私がそう言うと、悟は私の方を見ずに、ずっと画面を見据えながら、
「ああ。どうせ俺も暇してるし。それにどうせ、明日お前の親いないんだろ? だったらさ。久しぶりにヤろうぜ。お前んち行くよ」
表情はクールなまま、悟はそう言った。私は、少し照れ臭くなるも、誕生日に悟に抱かれるのなら、これ以上、嬉しいことはない。
どうせ、家にお母さんなんかいない。毎年、誕生日に家にいたことなんかない。……お父さんがいなくなってから、私は誕生日いつも独りだった。
お母さんがシングルマザーになって、私と一緒にいる期間は、明日で、八年になる。
私が九歳の時に、お父さんが病気で亡くなった。
それから私とお母さんは二人で市営住宅に住み、お母さんは朝から夜中まで仕事をしている。
確かに、お母さんがそうやって頑張って働いてくれているっていうのは分かる。
でも、私はいつも家にポツンと独りきりで過ごしてきた。
……勿論誕生日だって。
私は長い髪をくるくる手でいじると、悟に、
「じゃあ、明日ウチに来てね、悟。誕生日プレゼント、楽しみにしてる」
「んー。俺の身体だけじゃダメかー」
「あったり前でしょ! みんな誕生日には彼氏からアクセとか貰ってるのに」
「女は高くつくなあ」
言って、悟はケラケラ笑う。私は今、こうして彼氏がいる。悟と付き合ってもう半年になる。
高校に入って、悟に出会って、私は変わった。
悟は目立つグループにいる男子だった。背も高いし、顔立ちも整っている。一目ぼれだった。だから悟に見合う女になるために、私も外見を派手にした。
高校に入ってばかりの頃に私は自分の容姿を変えたからか、自然と私の友達も派手な子たちになった。私は中学まで目立つ存在じゃなかったけど、今はスクールカーストの上位者だ。
そうなった私は、一学期の間に友達の応援もあり、悟に告白した。するとその答えはすんなりOKだった。私は初めての彼氏にもの凄く感動した。もう、独りじゃないんだと、私には支えが出来たと誇りに思った。
彼氏、友達。それだけが、私の寂しさを紛らわすことのできる居場所だった。
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