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午前二時五十五分
月夜は自室のリビングで、空を眺めていた。空は無数の色とりどりの星が輝き、見る者の心を魅了する。
「あと五分か……」
月夜は呟く。
五分後である三時には、月夜にとって重要なことが起きる。本当なら今の時間帯は眠っているし、月夜自身も眠くて仕方がない。
しかし、眠気を我慢してでもやる事が、この日にはあった。
月夜は昼間に購入した缶コーヒーを口に入れた。苦さと甘さが口に広がる。
「相変わらずコーヒー好きなんだね」
横から声がした。月夜は声の方向を見ると、姉の結月が立っていた。
「結月……」
月夜は姉の名を呼んだ。結月は優しげに笑い、月夜の横に腰かける。
三時が来たのだと理解できた。
「久しぶりだね、元気だった?」
「まあ、何とかやってるよ」
月夜は缶コーヒーを地面にそっと置き、封を開けてない缶コーヒーを結月に差し出した。
「はい、結月の分」
「ふふっ、有難う」
結月は缶コーヒーを受け取り、封を開きコーヒーを飲む。
結月は三年前に病気で他界しているが、一年に一度ある誕生日の午前三時には、こうして月夜の前に現れる。
きっかけは三年前の誕生日の午前三時頃、月夜が自室で寝ていた時にリビングのガラス戸を叩く音で目を覚まし、リビングに結月がいたことだった。結月いわく神様が一年に一度生を受けた時間にのみ、月夜に会うことを許してくれたのだ。
ちなみに午前三時なのは、双子が生を受けた時間だからである。
結月の姿は三年前から変わっていない。だがどういう理由であれ他界した結月に会えるこの日は月夜にとって嬉しいのだ。
「どう?」
「美味しいわ」
結月は朗らかに言った。結月も月夜が飲んでいる同じコーヒーが好物である。その姿を見る限り、結月が生きているようにしか思えないが、その事に触れると結月が嫌がるのであえて言わなかった。
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