マーシェルは早寝早起きを心がけている

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 いい夢を見たおかげで目覚めはすっきりとしていた。  時計の針は6を指している。  早起きできたことに気分が良くなり、鼻歌を口ずさみながら着替える。  食事を終えて、一息ついているとルームメイトが起きてきた。  まだ眠たそうに目をこすりながら挨拶をする。 「なんだ、マーシェル、君は随分と起きるのが早いな」 「リオン、早起きはいいものだよ。時間を有意義に過ごせる」  私の言葉が届いたのか届いていないのか、リオンは私のカップを見て眉を寄せた。 「それ、ひどい臭いだよマーシェル。腐ってるんじゃないか」 「失礼な。熟していると言ってくれ。リオンみたいな若い者には分からんかもしれないが」  ああ、そうか、すまなかった。そう謝る彼は根が素直ないい子だ。  食器を片付けると掃除や洗濯など一通りの家事をこなす。  時計の針が12時を回った頃にもう一人が起きてきた。 「随分と眠ってしまった! もうこんな時間なのか!」 「起きるのが遅いな、キース。昨日は何時に寝たんだ?」 「1時過ぎだったかな……ドラマを見ていてね。それにしたって寝過ぎた」  少々悔やんでる様子の彼を笑う。  確かに寝坊した時の1日の短さといったら悲しさを覚えるほどだ。キースの後悔も十分に理解できる。 「何てドラマだ? ぶっ続けで見るくらい面白かったんだろう? 最近のか?」 「ああ、リオン。レンタルしてきたやつでね。その辺にあるから見てくれ」 「うわ、懐かしいなぁ。これ、50年前くらいに流行ったやつだ。夢中になって見てたよ」  せっかくだからみんなで見ようとソファに腰掛け、ドラマを見始めた。  面白さに夢中になっていると随分と時間が経っていたらしい。 「ただいまぁ。おっと、おじさん達、何してるの?」  ハリーが酔っ払った様子で帰ってきた。 「君こそいい子はもう寝る時間をとっくに過ぎてるぞ」 「大学のやつらと飲んでたんだよ。今日は飲み過ぎちゃったけど」 「おい、今何時だと思ってるんだ。酒臭い体を何とかしろ」  リオンの言葉にハリーが時計を見る。 「なんだ、3時じゃないか」 「午前3時だよ、ハリー」  キースが呆れたように告げる。 「人間の君には少々夜更かしが過ぎるんじゃないかな」  キースの言葉に笑ったのはハリーだ。お酒のせいか、随分と気分が良さそうだ。 「100歳を超えた吸血鬼に心配されるなんて、たまったもんじゃないね!」 「失礼な、俺はまだ62だぞ」 「それを言うなら私は312だ。若造と一緒にされては敵わん」 「僕だって正確には108になるさ」  おじさん達、仲良いよね。そう言いながらハリーがソファに座った。  そしてものの5分で寝入ってしまった。  午前3時5分。夜はもう少し続く。
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