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「旅は道連れ世は情けって言うぜ?」  しれっと言い放った言い放った男に、これ以上は無理そうだと降参した。  ふう、とため息をひとつ。そしてパタンとタブレットケースを閉じた。 「私は旅ではなく、仕事ですけどね。」 「それはオレも同じだ。」  ちょうどそのタイミングで店員が料理を運んでくる。香ばしい肉の焼けた匂い。 「和牛の西京焼きとアスパラの煮浸しです。」 「お、来たな。」  嬉しそうに男が眉を下げる。そんな表情をすると、途端に若くなった。もしかして、年下なのかもしれない。 「アンタも食えよ。」 「え、いえ……」  まるで旧知の仲のように料理を勧められ思わず怯んだ。これ以上なあなあになるつもりはない。 「自家製ざる豆腐お待たせしました。」 「その代わり、俺も豆腐食う。」 「は?!」  潔癖症とまでは言わないが、あまり同じ食べ物を突き合うのが得意なほうではない。  それをいきなり初対面の人間とシェアして食べる?  ーーいや、無理だろ? 「和牛、熱いうちに食わないと旨いもんも旨くなくなる。ホラ!」  自分の箸で俺の皿に二切れ、投げ込むように小皿に入れられる。 「早く食え!」  これは土方の洗礼か?  仕方なく、えいやっとばかりに一切れの肉を口に放り込む。
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