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 香ばしい味噌の香りが鼻腔を抜けた肉は、驚くほど柔らかくて思わず目を見張る。他人の箸で摘まれた物だなんて、まるで気にならないほど。 「旨……!」 「ふっ……。アンタ、見た目の割に顔に出るな。」 「え?」  聞き返した時には、既に本人も肉を口に運んでいる最中であり、その横顔は男臭くて思わず引き込まれてしまうような色気があった。 「何、好みのタイプ?」 「は……、はあ?!」 突然のふざけた言葉に、大きな声が出て店内の視線が集まった。それが恥ずかしくて小さく咳払いをしてビールで流し込んだ。 「……変な事言わないで下さい。驚きます。」 「それは意識してる証拠だな。」 「そんなわけないじゃないですか。お気付きだと思いますけど、私は男ですよ。」 「そのセリフこそ、まさしくだけどな。」 「……何を言ってもムダみたいですね。」  上手く反論ができないまま、ヤケ食いのように2枚目の肉を口に頬張った。ちくしょう、旨い。 「アンタ、名前は?」 「なんか、答えるの怖いですね。」  酔ってきたせいか、段々と社会人としての仮面が剥がれてきた気がする。それでもこの男にはいい。  それくらいでちょうどいい。……たぶん。
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