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 元々同性同士の恋愛に偏見がある訳じゃない。言ってしまえば、割と近しい人間に同性カップルもいる。  だからと言って自分が同性と付き合うなどとは考えたこともなかった。  付き合う、とは何を条件に始まるものだろう。  この場合、まずは嫌悪感を抱かないこと?  ーークリアだ。  ではこのヒジカタ氏とキスができるか? 「なんだ?」  思わず、酒に濡れたその口唇を見てしまう。  軽薄そうな、薄い口唇。 「ヒジカタさんは、女性にモテそうですね。」  軽いジョブと、純粋な感想。 「男にもモテるけどな。」 「それはそれは……。」  聞こえないように顔を背けて、小さく呟く。 「ハスネは?」 「どっちにもモテませんよ。」 「よく言う。」  黒曜石のような瞳が、妖しく笑った。  土方を否定する訳じゃないが、これで普通のサラリーマンなら女は放っておかないだろうな。いや、今このカジュアルな服装なら充分だけど。 「で、ハスネは何やってる人?」 「……ごく普通のサラリーマンです。」  隠すほどのことでもないが、こんなタチの悪そうな男に情報は渡せない。 「どんな会社?」 「普通の会社ですよ。」 「頑なだな。」  言いながら片手を上げ、店員を呼ぶと日本酒を頼んだ。気付けば自分のグラスも終わりかけている。
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