Mother

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 水曜日、僕たちは子どもたちを学校に送り出した。子どもたちは僕たちがどうして仕事に行かないのか、不思議そうに見ながら学校に行く。  久しぶりに二人きりで過ごす昼の時間も悪くない。僕と美紀は、子どもたちが生まれる前のことを思い出しながら、思い出話に花を咲かせる。ハーブティーを飲みながら、ゆっくりと眺める窓の外の景色も悪くない。 「ねえ、三時のおやつのことだけど」  ハーブティーを啜ってから、美紀が言う。 「うん。何を作るんだい?」 「秋だしさ、この前サツマイモをいっぱい貰ったから、スイートポテトでも焼いてみようと思うんだけど」 「悪くないね。僕もスイートポテトはすきだから。まあ、僕の母は、スイートポテトなんて一度も作ってくれたことはないけどね。きっと、母のレシピの中にはスイートポテトがなかったんだな」 「そっか。でも、私も初めて作るのよ?」 「じゃあ、僕も手伝うよ。子どもたちが喜ぶ顔もみたいしね」 「ありがとう」  美紀は笑顔で礼を言った。  僕と美紀はキッチンに並んで立ち、本を見ながらスイートポテトを作る。久しぶりの共同作業に、僕も胸が踊る。  オーブンの中で、スイートポテトがこんがりと焼け、甘い匂いが部屋の中に漂ってくる。もうすぐ三時のおやつができあがる。きっと、子どもたちも喜んでくれるに違いない。 【完】
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