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食事を終えた人達が次々と席を立つ。もう昼休みも終わりの頃だからだろうか。店内に残っているのが、女性ばかりになっていく。女の人の視線の先には常にマリィが居て、「綺麗」「素敵」「恋人になりたい」とずっと彼の話をしていて、居心地が、あまり良くなかった。
「エメ」
降ってきた声にはっとして顔を上げる。マリィが料理を持って立っていた。テーブルの上に、仔羊のシチューとサラダ、焼き立てのパンが並べられる。あと、頼んでいないのにクランベリージュースも。
マリィは何故か向かいの席に座って、「ボナペティ」と目を細めて笑って言う。サービスってことかな。
「ありがとう」
俺がお祈りをして食べ始めると、向かいで頬杖をついてじっとこっちを見ている。真顔で、ただじっと。窓から指した光を受けて、真っ青な瞳と長い金髪がきらきらと輝いている。白い肌は光に当たっている部分が透けているようにも見えて、まるで彫刻のような完璧に近い美しい姿だった。
軽く見惚れていた俺は、視線を外すと、サラダを黙々と食べる。が、視線に耐えきれずに肉を一切れ食べ終わってから、声を掛けた。
「な、なんだよ。仕事はいいのか?」
「……美味しい?」
「うん、美味しいよ。ロランドさんの料理の味がする」
マリィはまた黙って俺が食べるのを見ていた。本当に仕事はいいのかと思ってしまうが、お客が席を立たないし、料理の注文もないから暇なのかもしれない。
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