その夜

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「は、ぁ……んっ……」  彼が全体を手で包んで扱き始めると、すぐに身体は絶頂に向かって昂ぶっていく。もう、理性ではどうにもならなかった。 「あぁ……っ!」  身体が仰け反る。快楽の波が全身を飲み込んでいく。身体を小刻みに震わせながら、俺は彼の手の中に精を吐き出した。  ぼうっとする頭で、状況をまた理解しようとする。俺は、マリィに無理矢理身体を弄られて、それで、達してしまった。そう思ったら、憤りと自己嫌悪と、そして彼への怒りと裏切られた悲しみとをないまぜにした感情が俺の中に渦巻いた。  ――どうしてこんなこと――。  でも、一番に浮かんだ言葉は、それだった。怒りよりも何よりも、悲しかった。どうしてこんなことをされているのかも、彼がしているのかも、分からなかった。  見上げた彼の顔は、ただ冷たさや恐ろしさを感じるくらいに無表情で、部屋の片隅にあるテーブルランプに照らされて、時折光る深い蒼い瞳も何の感情も映し出してはいなかった。  俺が口を開き掛けた時、彼の手が予想もしていない場所に触れていた。尻の割れ目の孔に濡れた指を宛がっている。 「ひ、ぁ……!」  反射的に逃げようとしたが遅かった。指が中に入ってくる感覚がして、下腹部に嫌な異物感がする。更にその指を抜き挿したり、内壁を押し拡げるように掻き回したりし始める。そんな行為に嫌悪感しか湧かないはずなのに、時折触られると身体が反応する場所があって、変な声が出そうになる。
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