その夜

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「も、やめろ、それ……! 何やってんだよ……! 変なとこ触るなっ」  俺がそう言ったからだろうか。マリィは指を素直に引き抜いた。触られたところがむず痒いような疼きを微かに孕んでいて、自分の身体が自分の感情とは別の反応を見せ可笑しくなっていることが怖かった。 「いっ……!」  逃げようと思ったところだった。まだ自由な足で彼を蹴飛ばしてやろうとしていた。でも、そんなことを試みる前に、突然襲い掛かった全身を駆け抜ける激痛に俺は息ができなかった。  何がどうなったか分からなかった。痛みに身を捩りながら、俺に覆い被さるマリィを見る。俺の中に、マリィの硬い肉棒がずぶずぶと入っていくのを見て血の気が引いた。 「! あっ……く、ふっ……うぁ……っ」  受け入れる準備などできていないのに、彼が腰を打ち付け始め、その度に激痛が走る。何度も何度も奥の奥まで突かれ犯し尽くされる。痛みのあまり視界が涙で滲む。 「い、あっ……やめ、ろ……」  言葉しか抵抗できない。身体は自由を奪われて動けない。でも、何を言っても好転することはないと分かっていた。もう、こうなっては彼が果てるまで付き合わされる。 「ん、ふ……く、そ……あぁっ……!」  彼の律動が段々早くなってきて、中でひと回り大きくなるのを感じる。狭い場所を何度も何度も傷口を抉るように突き上げてくる。しかし、痛みしか感じないはずなのに、時折口から甘い声が漏れ出してしまうのは何故なのだろう。 「っ、は……」  その時、最奥まで強く突き上げられると同時に、中に何か熱い飛沫が放たれる。マリィの身体が、びくと震える。  ずる、と中から異物が引き抜かれ、押さえ付けられていた手が解放される。でも、もう俺には逃げ出す気力も無かった。  ――どうして。  泣き出したいほどのどうしようもない悲しみは、マリィに対する怒りに変わった。いや、代えたんだ。 「……殺してやる」  その言葉が、適切だったかどうかわからない。ただ、裏切られ傷付いた俺には、丁度いい憎しみの言葉だったのかもしれない。
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