ちっちゃな怪獣王国の王子様

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ちっちゃな怪獣王国の王子様

「この先に教会がある、そこで神主からお告げを聞くんだ、君がこれから何をすべきかはそこでわかるだろう」 ノフィンはそうチイに告げた。 「うん、おおきにな」 手を振りあって分かれた後チイはとりあえずは教会を目指しに上がった。 その時「オラオラ、もっと良い声で鳴きやがれ!!」 と三人はいるだろう女達の汚い罵声が響いてきた。 「うっく、うにゃあんうにゃあん」 と猫の鳴き声が同時に聞こえる。 「猫をいじめてるの?許せない!」 正義感の強いチイは果敢にいじめっ子に向かって行った。 「こら!弱い者いじめはやめなさいって…貴女達は!!」 チイはびっくりした、猫をいじめていたのはチイ自身の考えたキャラ、西村ミサが含まれていたのだ。 「貴女は西村ミサ!」 「アタイが泣く子も黙る天下の女王西村ミサよ!そう言うお前は何モンだ!!」 ミサが啖呵を切った。 「山本チイよ!そこの猫ちゃんを放しなさい!」 「やなこった!野郎ども、やっちまえ!!」 ミサは取り巻き達に指示を出し、取り巻き達はチイに襲いかかってきた。 ドカバキ!! チイは取り巻きをコテンパンにやっつけた。 「さあ残るはアンタだけやで」 「くそっ覚えてろ!!」 ミサは逃げだした。 「君、大丈夫?」 チイは猫に話しかけた。 いや、その猫は猫のようで猫ではない、手のひらサイズのブサ可愛な生き物だった。 「助かりましたにゃん、僕はトラネコーン、助けてくれたお礼に僕の歌を聞いて欲しいですにゃん」 「歌?そんなん良えよ」 歌を聴く気にならなかったチイは丁重に拒否した。 「うっく…」 するとトラネコーンは涙ぐみはじめた。 「うにゃあんうにゃあん!あんまりですにゃん、あんまりですにゃん!」 トラネコーンは地団駄を踏んで泣きじゃくった。 「ああわかったわかった、聞いてあげるけん泣き止みや!!」 チイはその爆音レベルの鳴き声に耳を抑えてトラネコーンをなだめた。 「本当ですかにゃん?じゃあ歌いますにゃん♪ 僕はトラネコーン猫?ちゃうちゃう怪獣ですにゃんトラネコーン♪」 トラネコーンは物凄く音痴だった。 チイは思わず両耳を塞いでしまう。 チイが両耳を塞いだのをトラネコーンは見てしまった。 「僕の歌がそんなに嫌ですかにゃん?」 トラネコーンは涙ぐむ。 (い、いけん!) チイは慌てて弁明する。 「そ、そんな事ないよ、トラネコーンの歌は騒音レベル…ちゃうちゃう轟音レベルに素晴らしい歌やよ!?」 苦笑いしながら励ますがトラネコーンはまた泣き出した。 「騒音レベルなんてあんまりですにゃん!轟音レベルなんてあんまりですにゃん!」 地団駄を踏み泣きじゃくるトラネコーン。 「今度こそ真面目に聞いたるけんどんどん歌って!(もう破れかぶれや!)」 チイは心の中で悲鳴を上げつつトラネコーンをなだめた。 「本当ですかにゃん?じゃあ歌いますにゃん!僕はトラネコーン♪世界一泣き虫ちゃうちゃう強い怪獣王国の王子さま〜♪」 (耐えるんやチイ…おとんの雷にもノファンさんの小説の指摘にも懸命に耐えてきよったでないか…浪速のど根性やチイ!!) チイは自分に言い聞かせトラネコーンの騒音レベルの歌声にじっと耐え忍んだ。 「チイチイは険しい顔〜ちゃうちゃう逞しくて強い女の子たらたら〜♪」 チイのめちゃくちゃ気にしているワードが歌詞の中に入ってきた。 グワシッ! チイは鬼のような形相になり手のひらサイズのトラネコーンを掴んだ。 「ウチの顔が険しいんはあんさんの音痴な歌聞いとるからやろが〜わかっとんかワレ〜?」 「うにゃあん!冗談ですにゃん!チイチイは男みたいな…ちゃうちゃう力強くてカッコいい女の子にゃん!」 トラネコーンは慌てて必死にチイをフォローした。 しかしその言葉に更に傷ついたチイの怒りは更に頂点に達した。 「せめて可愛いって言えやボケー!!」 チイは力一杯トラネコーンを投げ飛ばした。 「うっく、うにゃあん!あゆこさんモデルの可愛い猫怪獣に対してたらたらあんまりですにゃん、あんまりですにゃん!」 トラネコーンは空高くまで飛ばされ、歌いながらどこかに落下した。 (はっ!いけない、ウチったらなんてことを!!) チイは我に帰った。 トラネコーンは向こう側の怪しげな森まで投げ飛ばされた。 「トラネコーン…無事やと良いけど…」 罪悪感に苛まれたチイはトラネコーンを探しに向こう側の怪しげな森に向かって行った。 その森は危険なモンスターが多い「魔の森」である事を、チイはその時はまだ知る由もなかった。
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