再会

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再会

かなりの悪臭がナリスの鼻を突く。 ずっといると衛生環境に悪い場所にナリスはいるようだった。 (な、なんなのここ臭い!私ゴブリンに襲われるの?襲うなら早くして!) ナリスは目を開ける。 真っ暗闇だが闇の中を手で探るどグチャッと何かが潰れる感触が襲った。 そしてブンブンとさっきからうるさい。 どこにいるの私…。 その時突然ライトが点いた。 点いたというか、何者かが灯りを灯し周囲を照らしたのだ。 しかしナリスの目に第一に飛び込んだのはそれでは無かった。 ゲッ!これはゴミ捨て場!!? ナリスが見たものはゴミの山。 生ゴミやら、動物の骨らしいものが大量に積まれている。 で、そのゴミ捨て場にどうして私がいるの? ゴブリンは女の子を襲うはず…。 チイも勿論可愛いけど、私も容姿ならチイに負けないくらい可愛い…なのにこんな臭いゴミ捨て場に捨てられてるのは納得いかない…。 ナリスが眉間にしわを寄せ頭を傾げているところにライトを照らした主が声をかけてきた。 「久しぶりだね」 「あ、貴方は!」 その主はナリスが一度会った事のある人物のようだった。 「タキシードスィール様…」 そんな時ナリスはチイの事を思い出す。 「それよりタキシードスィール様!私の仲間はどうなってるの?さっきまでゴブリンと戦ってたんだけど…」 「山本チイと言う女の子のことかい?彼女は可愛いからゴブリンに襲われてるところだろうね!」 サラリと答えるスィール。 「大変!早く助けに行かないと!!」 「こんな無防備なかっこうでかい?」 「!!!」 ナリスは身ぐるみを剥がされていた。 「これを巻くと良い」 スィールはナリスに大きな布を手渡した。 「どうしてチイ様が襲われて私がここにいるのです?」 一番気になったのでナリスはスィールに問いただした。 「君は臭いので捨てられたようだ」 「臭い?そんなはずは…」 身体は清潔にしてるのに…とナリスは自身の身体を嗅ぐ。 スィールはため息をついた。 「それよりチイ様を助けに行きましょう!!」 「その心配はない、それより今の君が行ったところで足手まといになるだけだ」 「酷い!どうしてこんな事を言うの!?」 思いの外冷たく言い放つスィールにナリスは猛反論する。 「君がチイ君といて彼女の役に立ったことなどあるか?」 スィールは静かに、そして正確にナリスに放つ。 「わからない…でも私は勇者よ!貴方もそう言ってたじゃない!!」 ナリスは半泣きになっていた。 「確かに君は勇者だ、しかし初めからそんな強くなれるはずはない、今までの経験でわかったはずだ」 「どうして…いつもいつも頑張ってたのに…」 スィールはナリスに近づき、そっと涙を拭う。 「泣かないで、秘密の特訓場がある、そこに行けば君はチイの役に立てるくらい…いやチイよりずっと強くなれる…僕が保証する!」 「本当に…?」 「ああ、勇者はいずれは強くなる運命、偶然にも君がそれに選ばれてるんだ!だから君はこれからどんどん強くなれる!」 スィールはナリスを抱きとめ、そう囁いた。 「うん、そうだねスィール…勇者は簡単に泣いちゃいけないんだ…私、強くなるよ!チイ様のお役に立てるくらい!」 「良い子だ、さあこれに乗って!」 スィールが手をパチンと鳴らすと大きな翼を生やした海豹が現れた。 そしてナリスはスィールと共に何処かに飛んだ。 その時スィールの口元が怪しく上がっていた事をナリスは知る由も無かった。 ーーー 『ウボァーーー!!!』 ゴブリンの群れは怒りの念から噴出されたチイの闘気に巻き込まれ、一掃されていった。 「ウチが身体を許せるんはアレン様やベリアル様だけや、出直せボケ!」 チイは灰となったゴブリンの群れにそう吐き捨てた。 「それよりナリス自分が勇者でないと言う事実上手く受け止めれるんやろか?」 チイはナリスに自身が勇者でない事を告げるつもりでいた。 しかし簡単にはナリスは自分が勇者でない事を認められるはずはないだろうとも思っていた。 「これ以上勇者やと勘違いして馬鹿やられても困るわ、ほなけんウチがしっかりとその事実を叩き込んで更正させてやらんと!」 チイはまずは逸れたナリスの安否を確かめる。 その為には生き残っているゴブリンにナリスの居場所を吐かせる。 「ナリスはどこにおるんや?」 『ゴミ捨て場に捨てました』 チイは白状したゴブリンを解放し、そのゴミ捨て場に向かった。 「うっ、臭いなここ…それよりナリスおらんでないか…ひょっとして嵌められた!?」 『ふはは!今頃気づいたか!しかしもう遅いわ!!』 ゴブリンの声がしたあと洞窟内が揺れだした。 岩が崩れていく。 チイは必死に地上を目指した。 そして這々の体で洞窟から脱出する。 「ふう、ほんまどうなるかと思ったわ…結局ナリスは見つからなんだけどきっとどこかに逃げて上手く過ごしとるわ、とりあえずはそう思おう」 チイはナリスの無事を祈った。 同時にチイはナリスが実は勇者ではない事を知った。 しかしナリスは自身を勇者だと信じて疑わないでいる。 ナリスのような少女は決して珍しいケースではなく、少年少女なら誰しも自分は勇者、お姫様だと思い込んでしまう事があるものだ。 それは大人としてのスキルを身につける要素、出世するには良い原動力にもなるが悪い方に向かってしまう事もある。 しかしその勇者とやらがナリスでは無くまさかウチだなんて…。 運命はなんと皮肉なもんなんや…。 まあナリスはナリスなりに頑張った。 多分、報われたとは言い難いが生まれ変わったら立派な勇者になれるやろ。 あの子の事を応援してやろう。 チイは空に向けて手を合わせた。 “ナリスのこれからに幸あれ!!“
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