休み休みいきましょう。

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――もう20年以上前のこと。 当時、我が家のリビングには壁掛けのメロディ時計があった。 某有名テーマパークのキャラクターが、一時間ごとにオルゴールのメロディと共にくるくると回りながら扉から出てきて、曲が終わると扉の中に帰っていくからくりになっている。 新築祝いに親戚から貰ったもので、大層な仕掛けのおかげでかなり大きなその時計は、リビングの壁で一際存在感を放っていた。 時計から3時を知らせるメロディが流れはじめると、息子達の戦いごっこは一時休戦。 夫が新聞紙と画用紙で試行錯誤した手作りの剣はポイッとその辺に放り投げられて、 二人は一目散に、私のところに駆け寄ってくる。 遊びたい盛り、体力有り余りまくりの5歳男児。 しかも双子とくれば、家の中がどんな状況かは誰でも容易に想像つくだろう。 泥棒だってこんなに荒らさないわというほどおもちゃだらけの部屋にため息を落としながら、脱ぎ散らかされた二人分の園服を片付ける私に、 息子達は無邪気にこう言うのだ。 『ママー!!3時だよ!おやつ~!』 『アイス!あ、やっぱりゼリー!あ~でもチョコも捨てがたいっ』 『……勝手に食べてくださいな。だけど一人一個までだからね!夕飯食べられなくなるから』 『ハーイ!』『ハイハーイ!』 キャイキャイと盛り上がりながら冷蔵庫やおやつの棚を漁る息子達。 その後ろ姿を半分呆れた顔で眺めたら、 『はー……ママもコーヒーでも飲も』 終わりの見えない汚部屋との戦いも、一時休戦。 おやつを頬張りながら、幼稚園での出来事を二人同時にわーわーと話してくる息子達。 それに両耳を傾けながら、聖徳太子にでもなった気分で「ほうほう、うんうん」と相槌を打ってはコーヒーを啜る私。 それが、我が家の3時の日常だった。
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