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追いかける者
俺の名前は冬真 新也(とうま しんや)、警察官だ。今回、エリーナ連続殺人事件を極秘に追うことになった。勿論、事件について、警察全体としては全力で捜査を行っている。刑事が二人も殺されてしまった事件だ。必ず犯人の成美 桜花を逮捕する。
ただ、相手は前代未聞のシリアルキラーだ。警察としては、極秘に動く部署も設置して対応をしたかったのだろう。俺は大人数で動く部隊よりも、部下を一名付けてもらうことを要望した。後は俺の指示で動いてくれる刑事を数名。大人数になると考えをまとめるだけでも面倒だ。俺としてはこの体勢の方がやりやすい。
部下は内菜 里央(うちな りお)、全ての面において優秀な職員だ。しかも、中々の美人でスタイルも良い。神様の不公平さを感じながら、俺は成美 桜花を追いかけることになった。
今の所、成美を追い詰める手立ては全くない。何処かに潜伏をしているのは分かっているが、当てにならない目撃情報に振り回されているのが現状だ。
それに、最近になって、別のシルアルキラーが現れた。クレイジージョーだ。短期間で四人の人間を殺害している。そのうち、成美の八人に追いつくのではないかと言う勢いだ。
そんな事はさせない!
成美を逮捕し、クレイジージョーも逮捕して見せる。
逮捕……。
逮捕してどうなる。
二人を逮捕しても、精神病棟に一生閉じ込めて終わりになってしまわないか……。
そんな予感が頭の中を過ぎった。
また、二人を逮捕することの危険性も配慮しなければならない。成美に殺された二人の刑事だって、新人ではなかった。特に夏海はベテランの方だった。未だにあの時の行動は不可解でならない。成美を追い込んだつもりでいたが、実は成美にコントロールされていたと言う事なのか。
とにかく、直接、接するのはかなり危険と見ていい。
直接、接することなく、どうしたら成美を潰せる……。
ふと、頭の中に浮かぶ、もう一人のシリアルキラー……。
クレイジージョー……。
この二人を対決させるのはどうだろうか?
二人は同じシリアルキラーではあるが、タイプが全く違う。鉢合わせになれば、対決になるのではないだろうか。お互いで潰し合って貰えれば、こちらとしても好都合だ。
俺は真面目にこの事を内菜に相談をしたが、流石に一蹴された。
けど、俺はこの考えを捨てるつもりはない。
前回はこちらがコントロールされてしまったが、今回は逆にしてみせる。必ず成美とクレイジージョーを潰して見せる。
俺は試行錯誤を繰り返し、成美とクレイジージョーを戦わせる策を練った。
何処かに潜んでいる成美を探し出すより、成美を引っ張り出す策はないのか。成美を引っ張り出したら、どうやってクレイジージョーと鉢合わせにする。
そして、二人をどうやって戦わせて共倒れにする。
俺はこの課題を敢えて内菜に持ちかける。
「冬真さん。またその話題ですか。確かに、直接遭う危険性は避けられますよね。けど、具体的にどのように進めて行くか。それさえ、はっきりすれば、少しは先が見えると思うんですけどね」
内菜はパソコンの画面を睨みながら、いつもよりは少し積極的な回答を返して来た。
「奴らは殺し方にそれなりの拘りを持っている。そこを上手く刺激出来ないかなと考えている」
「刺激する材料はあるんですか?まさか、こちらで死体を準備するなんて言わないで下さいよ」
内菜の素気ない回答に俺は閃きを感じた。
「そのまさかだよ」
内菜の表情が、驚きを隠せないものとなる。
「どうやって」
「とにかく死体を準備して、奴らを刺激することから始める。刺激をされれば、奴らは勝手に動き出す。そこをどう上手くコントロールするかだ」
「どんな死体を準備するつもりですか」
「そうだな……。例えば成美の殺し方をして、何処かに『C・JYO』と表記する。どちらかが動き出せば、しめたものだろ。後は、二人を衝突させれば良いだけさ」
「そう簡単に行くでしょうか?かなり念密な計画が必要になると思いますが」
「乗ってきたな。それじゃ、その念密な計画を二人で考えようじゃないか」
「やってみる価値はありそうですね。探すのではなく、引っ張り出す。そして、共倒れを狙う。悪くない話です」
内菜が乗り気になった。
俺達は奴らを潰すための計画を真剣に考え始めた。
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