1824人が本棚に入れています
本棚に追加
幸せな朝
がやがやと廊下を歩く人の足音で、栞は目を覚ました。
目の前に鷹野の端正な顔があって、ぼんやりと開けていた目を、大きく見開く。
(な、なんでここに史哉くんが…!!)
鼓動を大きく跳ねさせてから、すぐに思い出した。昨日の夜何が起きたかを。
32歳の誕生日の夜。初めて、栞は愛する人と一線を越えたのだった。
思い出すだけで顔が火照ってくる。
最初は日付が越えたら、自室に戻ると言っていた鷹野だったが、結局疲れて寝落してしまったのか。そもそも先に意識を手放したのは、栞の方だった気がする。
ナイトテーブルに備え付けの時計を見ると、今、まだ6時前だった。朝食は7時と決められていた。先程の足音は、その前に朝風呂を浴びてこようという人たちの移動だろうか。
起こした方がいいよね。
鷹野の荷物も着替えもここにはない。一旦自室に戻らないといけないだろう。みんなが起き始める前に、動いた方がいい。
欲を言えば、もう少し鷹野の寝顔を見ていたいが、栞は鷹野の肩に手を置いた。
「史哉くん…」
軽くゆすると、鷹野の肩が揺れる。
「起きて」
「ん? あ、栞…?」
一旦目を開けたものの、鷹野はまたすぐに寝息を立ててしまう。寝起きの悪いタイプらしい。
「起きてください。史哉くん、一旦お部屋に戻らないと…」
今度は強めに言って、もう一度肩を揺さぶった。
「じゃあ、栞がちゅーしてくれたら起きるよ」
最初のコメントを投稿しよう!