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がちゃんと重たい扉が閉まると、急に静寂が二人を包んだ。
――まず、何を言えばいいんだっけ。そうだ。
「ご、ごめんなさい!」
「ごめん!」
二人の声はほぼ同時に、室内に響く。
「ごめんて…なんで?」
「史哉くん、何も悪くない…」
お互い謝ったのに謝られて、これまた同時に疑問が浮かんでしまった。
「あ、あの」
「ん?」
「私からいいですか?」
生真面目に小さく手を挙げて、栞は鷹野に発言の許可を求める。そんな栞の肩を鷹野は優しく抱き寄せて、並んでベッドに座った。
「うん。ゆっくりでいいよ」
口下手な自分を、この人はわかってくれてる。要領の得ない話を、それでも聞いてくれると言ってくれる。
それがどれだけ安心できることなのか、栞はこの年になるまで、人にこんなに受け入れてもらったことはない。
「…私、人付き合いへたくそで、会話もいつも途切れちゃうし、私が話しても、みんな白けちゃうので、いつからか自然と周囲と距離を置く癖がついてるんです。自分に自信が全く持てないんです。
だから、さっき史哉くんが言った、『俺が彼氏ってそんなに恥ずかしい?』って、全く持って逆で。私が彼女なんて、史哉くんに迷惑かけないかな、史哉くんが恥ずかしくないかな、って。そんなことばっかり考えて、史哉くんみたいに堂々と出来ない…」
話してるうちに、いろんな感情が溢れてくる。
栞だって好きで人と距離を置きたいわけじゃない。ひとりでいたいわけじゃない。
けれど、どうして避けられてしまうのか、人から距離を置かれてしまうのかわからない。わからないまま、解決方法を見つけるのではなく、栞は別の安全策を取って生きてきた。極力人と関わらないですむように。
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