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「うん…俺も、さっきは言い過ぎた。栞の立場とか性格、考えてない心無い発言だったと思う」
「そんなことないです! 史哉くんは間違ってない」
お互い自分の非を認め合って謝って、それがなんだか不毛な感じがして、二人で顔を見合わせて吹き出した。
「仲直り、しよ?」
史哉の言葉に栞も全面同意だ。すれ違ったり傷つけあったり、もうあんな思いはしたくない。
「はい」
「けど、これからもきっとある。栞を傷つけたり、泣かせたりすること」
「え」
マイナスなことばっかり言われて栞は焦る。それでいいって…いいわけないと栞は思うのに。
鷹野は栞の手をぎゅって握って、5本の指を絡めた。折り重なった手のひらから、鷹野の熱が伝わってくる。
「だって俺たち、違う人間じゃん。ちゃんと説明されないとわからないことだってあるし、ぶつからないと折り合えない気持ちだってあると思う。兄弟ってさ、しょちゅうケンカしたりするけど、絶対に嫌いになったりしないじゃん」
「…私、兄弟がいないので、イメージが…」
「そっか。けど、俺にとって栞はそういう存在。ぶつかっても、泣かせても、俺の気持ちわかって貰いたいときはきついことも言っちゃうかもしれない。でも、すぐに仲直り出来るって信じてるし、俺の気持ちが変わることもない…って、なんでまた泣いてるの!」
優しく栞を諭してた鷹野の声が、焦りを含んだものに一気に変わる。
「あ、ごめんなさい。これは…違うんです」
説明しがたい気持ちが、鷹野といると自然に溢れてくる。嬉しくて暖かくて…そういう感情を、家族以外から受け取ったことのない栞には、もう『涙を流す』ことでしか、伝えられない。
栞は急いで指先で涙を拭った。
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