忘れられないバースデー

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さっきよりも鼓動が早くなる。鷹野のセリフの意味がわからない程、栞も子供ではない。 戸惑いや恐怖よりも、鷹野の傍にいたいという願望の方が勝ってる。きっと普通の女の子なら、とっくに何回も何人とも、経験してきたようなことなのだ。 「私も史哉くんの傍にいたい…ですが」 「が?」 「いいんですかね。一応社員旅行で来てるわけだし、そういう不純異性交遊的なの」 栞がただ一つ心懸かりなことを告げると、鷹野はぶはっ吹き出した。 「栞、そんなの心配してるの?」 「え、だって」 「修学旅行じゃあるまいし、平気だよ。俺の周りも部屋代わってもらってるやついるし」 「……」 そうなんだ。みんな結構大胆なんだな。栞の知らない水面下で行われてる駆け引きに、唖然とする。 「じゃあ日付が変わるまで…」 「朝まで、って言わないところが栞らしいよね」 「史哉くんの隣で、眠れる気がしないので…」 くすっと笑って、鷹野は栞の項からチェーンを外すと、項にキスをする。 「外しておくね」 ベッドサイドのナイトテーブル上に、ペンダントを置く。栞はその一連の鷹野の行為を、焼きつけるように見てしまう。 「どしたの?」 「なんだか信じられなくて」 鷹野との出会いからここまでが全て、夢みたいだ。 「夢じゃないって教えてあげるよ」 ふわりと抱きしめられる。鷹野の纏う香りが漂って、その香りに包まれて、栞は安心して目を閉じた。 一人でいるよりも安心できる。落ち着く――。 これまで一人だった栞にはそのこと自体が奇跡みたいだ。 栞にとっても、史哉にとっても、この夜は忘れられない夜になった――。
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