幸せな朝

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幸せな朝

がやがやと廊下を歩く人の足音で、栞は目を覚ました。 目の前に鷹野の端正な顔があって、ぼんやりと開けていた目を、大きく見開く。 (な、なんでここに史哉くんが…!!) 鼓動を大きく跳ねさせてから、すぐに思い出した。昨日の夜何が起きたかを。 32歳の誕生日の夜。初めて、栞は愛する人と一線を越えたのだった。 思い出すだけで顔が火照ってくる。 最初は日付が越えたら、自室に戻ると言っていた鷹野だったが、結局疲れて寝落してしまったのか。そもそも先に意識を手放したのは、栞の方だった気がする。 ナイトテーブルに備え付けの時計を見ると、今、まだ6時前だった。朝食は7時と決められていた。先程の足音は、その前に朝風呂を浴びてこようという人たちの移動だろうか。 起こした方がいいよね。 鷹野の荷物も着替えもここにはない。一旦自室に戻らないといけないだろう。みんなが起き始める前に、動いた方がいい。 欲を言えば、もう少し鷹野の寝顔を見ていたいが、栞は鷹野の肩に手を置いた。 「史哉くん…」 軽くゆすると、鷹野の肩が揺れる。 「起きて」 「ん? あ、栞…?」 一旦目を開けたものの、鷹野はまたすぐに寝息を立ててしまう。寝起きの悪いタイプらしい。 「起きてください。史哉くん、一旦お部屋に戻らないと…」 今度は強めに言って、もう一度肩を揺さぶった。 「じゃあ、栞がちゅーしてくれたら起きるよ」
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