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Tシャツにスゥエット。ラフな格好で立っていたのは、鷹野だった。
――な、何で!!
驚きの余り、無表情が更に固まってしまう。
しかも、何故まるで以前からの知り合いのように、声を掛けてくるのだろう。
すれ違ったり、社員食堂で見かけたことはあるが、至近距離で彼と向き合うのは初めてだ。
――うーん、やっぱりイケメン…そして、恐ろしいコミュニケーション能力…。
人間の美醜をとやかく言うものではないと、教えられて育った栞でも、鷹野は純粋にカッコいいと思う。背は高いし、目鼻立ちは整っているし、それに何より、表情が凄く柔らかい。
今も、社内では栞とは接点無かったはずなのに、栞の名前を呼び、にこにこした笑顔を向けている。
「…こ、こんにちは」
イレギュラーな場面で、栞には咄嗟に上手な挨拶が浮かばない。
「こんちは。八森さん、家近いんですか? ここ、よく来るの?」
「…はい、まあ散歩がてら」
「そうなんだ。しっかし、すごい荷物だね」
両手で抱えるようなサイズのぬいぐるみが2体に、ハンドタオルやらキーホルダーなどのグッズが計23個。
確かにどうやって持って帰るか、悩んでしまう量だ。
「俺、半分持ちましょうか?」
「え」
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