自分とは真逆の人

4/6
前へ
/126ページ
次へ
Tシャツにスゥエット。ラフな格好で立っていたのは、鷹野だった。 ――な、何で!! 驚きの余り、無表情が更に固まってしまう。 しかも、何故まるで以前からの知り合いのように、声を掛けてくるのだろう。 すれ違ったり、社員食堂で見かけたことはあるが、至近距離で彼と向き合うのは初めてだ。 ――うーん、やっぱりイケメン…そして、恐ろしいコミュニケーション能力…。 人間の美醜をとやかく言うものではないと、教えられて育った栞でも、鷹野は純粋にカッコいいと思う。背は高いし、目鼻立ちは整っているし、それに何より、表情が凄く柔らかい。 今も、社内では栞とは接点無かったはずなのに、栞の名前を呼び、にこにこした笑顔を向けている。 「…こ、こんにちは」 イレギュラーな場面で、栞には咄嗟に上手な挨拶が浮かばない。 「こんちは。八森さん、家近いんですか? ここ、よく来るの?」 「…はい、まあ散歩がてら」 「そうなんだ。しっかし、すごい荷物だね」 両手で抱えるようなサイズのぬいぐるみが2体に、ハンドタオルやらキーホルダーなどのグッズが計23個。 確かにどうやって持って帰るか、悩んでしまう量だ。 「俺、半分持ちましょうか?」 「え」
/126ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1824人が本棚に入れています
本棚に追加