好き。は小さな嬉しいの積み重ねby蓮見玲香

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鷹野から貰った小袋には、4つに折り畳まれた千円札が3枚入ってた。 ――使うのもったいないな。 千円札は千円札なのに。 どういう経緯を辿ったにせよ、価値は同じなのに。 栞は珍しくそんなことを思い、そのお金は袋ごとスマホカバーに挟み込んだ。まるでお守りみたいに。 金曜日は、栞の会社で毎年恒例の納涼祭だった。 祭りと言っても、社員とその家族対象のささやかなもので、仕事は6時までに全員終了が義務付けられ、終わった者から、屋上へ向かう。そこは、1日限定ビアガーデン風に設えられ、ビールやカクテル、ソフトドリンクも飲み放題。バーベキューに、綿菓子、ソフトクリームなんかも用意されていて、毎年社員から人気のイベントなのだ。 栞も普段のかっちりした、シャツとタイトなスカートではなく、ふんわりとしたワンピースで、今日は出社した。 浴衣を持ち込んで、終業後に着替える強者もいるが、勿論そんな気力はないので、少しだけお祭り気分を盛り上げるための装いだ。 「あ、八森」 社員総勢285名。加えてその家族…となれば、屋上は大賑わい。やっとその中で、栞は話が出来る人を見つけた。
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