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栞もあることに気がついて、思わず声を上げてしまう。
濃紺、ピンク、えんじ、緑…華やかな色とりどりの浴衣の中心に、頭一つ出てる男性がいる。鷹野だ。なるほど。
彼に少しでも気に入って欲しくて、浴衣を着てきたんだ。
恋する女の子のパワーは凄い。
浴衣の中に、先日駅から鷹野と親しげに話していた女性もいた。
なりふり構わないその姿は、到底自分には真似出来そうもなくて、結局、栞が恋愛出来ないのは、そのパワーが足りないせいじゃないか、と自己分析してみる。
「凄いですね…」
「鷹野、彼女いるらしいんだけどね」
「あ、やっぱりそうなんですね」
じゃあ、先日栞の家の近くで会ったのは、彼女の家からふらっと出てきたところに遭遇したのだろう。
何気ない相槌のつもりだったのに、何故か蓮見はにまにましながら、栞を見ている。
「やっぱりって、何、八森ー。あんたがこないだ、会社の前で、鷹野と親しげに話してた、なんて噂も耳に入ってきてんのよね」
「――!」
何処から漏れたんだ、そんな情報。
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