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目の前の相手との会話でさえ困難なのに、不特定多数の集団に投げ入れられて、どうやって自分をアピールしろと言うのか。
幼稚園時代から団体行動が苦手な栞には、行かない前から断言出来る。一言も喋らずに帰ってくるに違いないと。
「そ、それは、ちょっと私にはハードルが高すぎます」
「そう? いきなり一対一でデートするより、自分に合いそうな人が見つけやすい、って結構評判いいんだけど」
「……」
彼女に悪気はなく、親切なアドバイスなのはわかる。けれど、栞の立場に立った親身なものではない。
栞はお礼だけを述べて、静かにスマホを耳から離した。
やっぱり結婚相談所じゃダメなのかな。
熱くなった左耳を掌で抑え、ため息をこぼす。
だが、他にいい方法も見つからない。
幼稚園から大学、そして社会人9年めの今に至るまで一度も、誰かを好きになったこともなければ、好きになられたこともない。
見た目は決して悪くない、はずだ。シミ一つない白い肌、人形のようにぱっちり開いた瞳に、長い睫毛。ぷっくりした紅い唇。
最初に結婚相談所を訪れた際も、年齢を書き込むと、受付の女の子が驚いていたくらいに、見た目は20代半ばと言って通用する若々しさと美しさ。
が、栞の外見が華やかなら華やかな分だけ、内面とのギャップに男たちは戸惑う。
栞にしてみれば、普通にしているだけなのに、会話が弾まないとか、笑顔がないと言うだけで、楽しくなさそうだと判断されて、敬遠されてしまう。
要は恋愛に向いてないのだろう。
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