プロローグ

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あるところに小さな村がありました。村の大人は子供が出来ると小さい頃からこう言い聞かせます。 『昔々、村のはずれにある大きな池に龍神様が住んでいました。その龍神様はとてもとても美しく、誰もがその美しさに見とれてしまう風貌の持ち主でした。 ある日、ひとりの村娘がこう言いました。「龍神様を見てみたい」と。もちろん大人たちは反対をします。何故ならそう言って池に行った者は戻ってこないから。しかし村娘は皆が寝静まった深夜に、大人たちの目を盗んで池を訪れます。そしてその村娘は大人の話どおり、村に戻ることはありませんでした。龍神様に食べられたのでしょうか。さてはて…』 この話を聞くと子供は池に寄り付かなくなり、その恐怖感から自身に子供が出来るとその子供にもこの話を言い聞かせる。 そうして現代にまでこの話が語り継がれてきた。 その池は現在は公園の一部となったが、この伝承話のせいか昔から形は変わらず原型をとどめている。 更にこの話には、後に付け加えられた話がある。 『村娘が行方をくらませた何百年も後のこと。とある貴族のお嬢様が龍神の話を聞きつけ池にやってきました。そしてこう祈りました。「私にはお慕いする人がいます。親が決めた人とは結婚をしたくありません。願いを叶えてください。」と。娘が祈ると、池から美しい青年が現れました。宝石のような綺麗な角、眼は黄金色、髪は太陽に照らされてキラキラと光る水面のような美しい青色。それを見て娘は思いました。「ああ、なんて美しいのだろう」娘はその青年の側に行き、懇願します。自身が池の中に歩みを進めているとも気付かずに。青年は優しい笑みを浮かべながら何も言わずにその様を見ています。そして、一言だけ呟きました。 「汝の願い、叶えたり」と。 翌日、行方不明になった娘を探していた使用人が池で見つけた物は彼女がとても大事にしていたリボンだけでした…』
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